ガソリン沼とセメント沼 その2/セメント沼:『新しき世界』編

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続きまして、セメント沼こと『新しき世界』ですが、こちらは会長の死をきっかけにして始まる犯罪組織の跡目争いを軸に、熾烈なパワーゲームを繰り広げる男たちの「生と死」を息詰まるような緊張感で描き出したクライム・サーガの傑作です。

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ガソリン沼とセメント沼 その1/ガソリン沼:『RUSH ラッシュ/プライドと友情』編

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先行公開まで加味すれば、奇しくも同じ日に封切られ、前評判通りの傑作ぶりで絶賛を集めている二本の映画『ラッシュ』と『新しき世界』。共に争い、すれ違い、理解し合う野郎どもの精神面における共鳴と咆哮と慟哭を描き出しているその物語は、艶やかな男たちの関係性に激しく萌え上がる一部の業深き映画ファンにとって、 

「ハマったら抜け出せない沼」

のような深みを湛えており、作品の色合いを決定づける題材、スタイル、ガジェットの特徴から、それぞれ「ガソリン沼」「セメント沼」と呼ばれています。

「抜け出せないと知っていて、どうして深みにハマるのか?」と問われれば「そこにいけめんがいるからだ」としか答えようがなく、そんな返答をした時点で、大抵の人間は「へ…へぇ」と呆れ顔のまま後ずさりしていくのですが、そこはちょっと待っていただきたい。

同じように「底が見えないからこそ覗き込んでみたい」「足を踏み入れてみたい」という、仄暗い欲望を喚起する深淵の佇まいも、いざ浸かってみれば、水質・温度・粘度において大きな差異があるのでして、単純に「こう見える」という「沼」の「様相」だけ説明して興味を持ってもらったらゼンゼン体質に合わないものだったとなれば、お勧めした人間として、大変申し訳なく感じるワケです(←ドン引きされてる時点で、その心配はありません)。

ということで、東京を白く染め上げた雪の名残が舗道に残る二月十二日、「こう寒くちゃやってらんねえし、暖でも取るべい」と殆どスパ銭にでも行くような気分で再度二つの沼に浸かり、親愛、信頼、相互理解と疑惑、逡巡、衝突を反復する中で、相手の不在がその存在を一層強く意識させる地点にまで至る男たちの饗宴を堪能してきたのでありますが、その際に感じました双方の魅力やら差異やらを徒然語ってみようと思った次第です。 

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